東堂くんは喋らない。
「…なんか、すごかったね~」
そして帰り道。
私はなんとなく、そのままの流れで遠藤くんと下校していた。
偶然にも途中まで、家が一緒の方面だということが発覚したんだ。
「…なんか、ゴメンな。いつもは顧問もいるからさ、全然あんなことないんだけど。
今日は体育祭の練習に行ってて顧問もいなかったからか、あんなにギャラリーが」
「大丈夫だよ、全然。
それにしても遠藤くん、スゴかったね~!今日何本決めた?シュート!」
やっぱり遠藤くんはエースというだけあって、バスケ部の中でも際立って目立っていた。
まるで手にボールが吸い寄せられているみたいに
自由自在で、流れるような綺麗なバスケだった。
「心なしかリレーの時よりも走るの、速かった気がするんだけど?」
「おいやめろよ松原、笑えないっつーの」
笑えないといいつつ、私の軽口に遠藤くんがケタケタ笑う。
その時、グ~ッ、と盛大に遠藤くんのお腹が鳴って。
一瞬時が止まったけど、少しして2人で爆笑した。
「やっべー、マジ恥ずかしい!」
遠藤くんが笑いながら叫ぶ。
あんだけ動いた後だもん、お腹減ったんだね。
「仕方ないなぁ、なんか食べてく?」
私も笑いながら提案すると、遠藤くんも二つ返事でそれにのった。