東堂くんは喋らない。
「うめ~っ、何これ、新作?テキトーに頼んだのにメチャうまい」
近くにあったハンバーガーショップにて。
遠藤くんがハンバーガーを食べながら感動している。
「よかったね、てか本当に、お腹すいてたんだね…」
お腹の空きがそこまででもなかった私は、ポテトを食べながら思わず笑った。
遠藤くんの食べる速度が、半端ない。
「まーな!松原も何か部活やれって。まだ間に合うって」
「いや、もうだいぶ手遅れ」
「もったいないよなぁ、うちのリレーメンバー。みんな運動神経いいのに、俺と黒沢しか部活やってねぇもんなぁ」
「確かにねぇ」
まぁ、山本はしょっちゅう、色んな運動部に飛び入り参加しては楽しんでいるようだけど。
「東堂も勿体ないよなぁ。実は隠れスポーツマンなのに」
「……あー、だね」
突然出た“東堂くん”というワードに、一瞬、ポテトを食べる手が止まる。
…何動揺してんの、私。
別に全然普通の話題じゃない、普通に、普通に。
だけど遠藤くんは、そんな私の様子を見逃さなかったらしい。
「…松原さ」
ちょっと真剣な面持ちになった彼は、食べ終わったハンバーガーの包を丸めながら聞いてきた。
「最近何かあった?東堂と」
「…え?な、何で?」
「だって、最近東堂と全然喋ってなくない?」
…私、そんなに周りからも分かるほどあからさまなのかな…。