東堂くんは喋らない。
―――そして時は流れ、体育祭、当日。
「うしっ、できた!」
私の頭を綺麗なお団子に仕上げてくれた柑奈が、ニヤリと笑う。
「いつもより100倍女度アップしたかも♡さっすが私」
「ありがと柑奈~♡」
手先が器用でヘアアレンジが得意な柑奈。
私はことあるごとにお願いしていた。
「あれ、なんか松原がいつもと違う!」
すると額に赤いハチマキを巻いた山本(必勝の文字つき)がやって来た。
「いいでしょ♡お団子~」
私が自慢すると、
「おう!俺お手製のこのハチマキぐらいイケてるぜ!」
とドヤ顔で張り合ってくる。
うーんそれはちょっと…複雑だ。
「おい東堂見てみろよ、松原がなんか髪型変えてんぞ!」
すると廊下から教室に入ってきた東堂くんを、すかさず山本が連れてくる。
「……」
無言で私の髪の毛をガン見する東堂くん。
そして一言
「………うん」
うん!?
「ちょっと東堂、もっと他に感想はないわけ?」
櫛をクルクル振り回しながら文句を言う柑奈。
「…感想…?感想…」
東堂くんが真剣に悩み始めてしまったので、「あぁもういいから!」と慌てて止めた。
「もう開会式始まるし、そろそろ行こ!」
「おお!だな!」
山本がキュッと必勝のハチマキを結びなおす。
「開会式からもう勝負、始まってるしな!
あれなんか俺今、すごくいいこと言った!?」
「うん、気のせいだね」
今日も柑奈に冷たくあしらわれながら、教室を出ていく二人。
「私たちも行こっか、東堂くん」
「だな」