東堂くんは喋らない。
俺と松原の間には、もう“友達”とはまた違う距離が広がっていて。
その距離をさらに広げてんのは、いつも俺だ。
「…ごめん」
「えっ…な、何で謝るの?」
その時、「香弥~!」と峰岸の呼ぶ声がして。
「あ…じゃ、リレー頑張ろうね東堂くん!」
松原はどこかホッとしたように笑って、峰岸の方に駆けて行った。
…あぁ、何で俺、いつもこんな…今朝だって…!
残された俺は、一人激しく自己嫌悪に陥る。
松原の傍にいると…どうしても手が伸びる。少しでも近づきたい、って思う。
告白する前はこんなことなかった。
告白して、箍が外れたんだろうか…ってそれじゃダメだろ。
俺は松原と友達でいるって決めたんだし。
『…これからも、いい友達でいて欲しい』
あの日泣きながらそう言った松原。
…随分酷なこと言うな、と思ったけど。
『明日からは、友達だ』
…そう、返事したのは俺だ。
俺も松原と、これからずっと話せなくなるのは嫌だったから。
…俺の方がもっとズルい。
口では友達なんて言いながら、“好き”って気持ちを捨てきれない。