東堂くんは喋らない。
「夏海たち、遅いね」
「ねー!ってか、あの時の東堂、やばくなかった?お姫様抱っこって!」
「なんか、マジでヒーローみたいだったよねー」
それから、すぐに閉会式が始まって、我が青団は総合4位という結果をおさめることができた。
可もなく不可もなく、といった感じの微妙な順位だけど、楽しかったから良しとしよう。
そして閉会式が終わり片付けが始まっても、東堂くんと夏海ちゃんは、まだ保健室から戻ってこなくて。
女子たちの間では、あの時の東堂マジイケメンだった!と話題を集めていた。
確かに、あの時の東堂くんはヒロインのピンチに颯爽と現れたヒーローそのもので、文句なしにかっこよかった。
でも、何でだろう。
なんでか、皆みたいに笑えない。
「…何て顔してんの」
椅子を教室まで運びながら、隣を歩く柑奈が言った。
「心配?2人が」
「え…えぇ?2人っていうか…夏海ちゃんは心配だけど、そりゃ」
「それだけじゃなくて」
はぁ、と軽くため息をつく柑奈。
「行っちゃえば?」
「行く?どこに」
「保健室」