東堂くんは喋らない。
「…い、いいよ、別に私が行ったって、仕方ないじゃん」
モゴモゴとそう答える。
そうだよ、私がそんな偵察みたいなマネしたって…意味ないし。
「…だったら、そんな気になって仕方ないって顔、やめたら」
「えっ?私そんな顔してる!?」
「してる。すごーく」
ちょっぴり悪戯っぽく笑った柑奈。
「香弥は分かりやすいから。
たぶん、自分が自覚してないことでも、全部顔に出てるよ」
「えぇー…」
何ソレ、めっちゃ怖いじゃんか。
「んでは!クラスの打ち上げは6時からっつーことで!各自現地集合でヨロシクー!」
簡単なSHRが終わった後、教壇でそう皆に呼びかけているのは山本だ。
どこのクラスも打ち上げはするみたいだけど、私たちは前々から、焼肉バイキングにしよう!という話になっていた。
「柑奈、何で行く?」
「んー、チャリ?っていうか」
カバンを肩にかけながら言う柑奈。
「…知らせてあげたら?時間とか。あの二人、まだ保健室にいるみたいだし」
「あー…や、山本がラインでもするでしょ!」
「俺はしねーぞ」
するといつの間にか背後に立っていたのは山本だ。
「はぁ?何でよ、してあげてよ」
「面倒くせーから嫌だ!つーことでオラ!お前が知らせに行け!ついでに黒沢の様子見てこい!」
「は…はぁ?」
山本にグイグイ肩を押されるまま教室を出る。
後ろでは柑奈が笑ってるし。
な…何なのもう!