東堂くんは喋らない。
ということで私は、ひとり保健室の前に立っていた。
ったくもう、2人して。
…ま、まぁいいや。
打ち上げの時間、伝えに来ただけだしね?
夏海ちゃんの様子見て、サクッとそれだけ伝えて帰ろう。
うんうん、と心の中で頷いてドアに手を伸ばす。
その時だった。
ガラッ…
「…あれ、香弥ちゃん?」
ドアが開いて出てきたのは、まだジャージ姿の夏海ちゃんと
それを支えるようにして立っている、東堂くんだった。
「どうしたの?もしかして香弥ちゃんも、どっか具合悪いとか?」
「え?うっ、ううん!
私はあの、2人に打ち上げのこととか連絡しようかなーっと思ってさ!
夏海ちゃん、足大丈夫?」
「あ、うん。東堂がすぐ保健室連れてきてくれたおかげ。まだ少し腫れてるけど…」
ありがと、と東堂くんを見上げる夏海ちゃん。別に、と顔を逸らす東堂くんの横顔。
「…どうかした?香弥ちゃん」
「えっ?いや、別に?
足、良くなったなら良かった!」
無意識に夏海ちゃんの背中に回されている東堂くんの左手をガン見してしまっていたことに気づいて、慌てて誤魔化すように笑う。