東堂くんは喋らない。
「それでは!青団の4位という微妙な順位を祝して!カンパ~イッ!」
「カンパ~イ!」
そして、打ち上げ会場の焼肉バイキング。
山本の「微妙な」が余計な掛け声に合わせて、皆でグラスを合わせた。
みんな「マジで微妙すぎだろ!」「どうせならビリがよかったよなぁ」なんて言い合いながらも、楽しそうに盛り上がっている。
「香弥、私たちも何か取りにいこ」
「うん!」
柑奈と一緒に席を立った。
お肉はもちろんのこと、野菜にホットスナック、お寿司にアイスにわたがしまで、ほぼ何でも揃っていて、しかも食べ放題。
テンションが上がらないわけがないのだけれど…
「あ、ごめん」
「や、こっちこそ!」
お肉を前にボンヤリしていたら、同じくお肉を取りに来ていた遠藤くんと肩がぶつかった。
「…どうした?何か元気なくない?」
お皿を持ったまま、私の顔を覗き込む遠藤くん。
「…え、そう?全然、メッチャ元気だよ~!」
「そ?ならよかった」
ニッと笑って、遠藤くんが私のお皿にカルビをのせた。
「リレー、ナイスラン」
「遠藤くんも!」
遠藤くんが後ろの走者を引き離してくれたお陰で、私も抜かれることなく安心して走ることができたんだ。
「っていうか私も取るよお肉、どれがいい?」
トングを持って構えると、気合入りすぎだろ、と遠藤くんが笑った。
「んー、じゃぁ…「牛タンで」
「…え、東堂くん?」
遠藤くんを遮るように牛タンを注文したのは、いつの間にか背後に立っていた東堂くん。
なぜか険しい顔をして、目の前に並ぶお肉たちを睨みつけるように見ている。
「と、東堂くん、牛タン食べたいの?」
「…いいから取って」
ん、と東堂くんが、私の方に持っていたお皿を突き出した。