東堂くんは喋らない。
東堂くんと、膨らむ気持ち。
自覚してしまった。
彼のことが好きだと、気付いてしまった。
だけど。
「おっはよ、香弥…って、どうしたのその顔!?」
いつもと同じような朝。
いつもと同じように校門をくぐって昇降口に向かっていると、後ろからやってきた柑奈が、私の顔を見て悲鳴をあげた。
「もしかして、また寝てないの!?」
「…あはは、まぁね〜…」
どうやら私は、悩みすぎると眠れなくなるタイプのようで。
昨日もベッドに入って目を閉じるまでは良かったものの、いざ寝ようとすると、東堂くんの切なそうな笑みや、苦しそうな声や、…唇の熱が繰り返し思い出されて。
結局、一睡もすることが出来なかった。