東堂くんは喋らない。
「山本がね、ボーリングとかどうかって!チーム対抗で!
絶対楽しいし面白いよ~!だから東堂くんも行こ!」
「…………」
「あ、もしかしてボーリング苦手とか?
だったら大丈夫だよ!私だって球技全般大得意なのになぜかボーリングだけは全然…」
「うるさい」
え、と声を詰まらせるのと同時に東堂くんが立ち上がる。
「…行くぞココア」
そして乱暴にココアちゃんのリードを引っ張ると、嫌がるココアちゃんを無理やりつれて歩き出した。
クゥン、と悲し気な声でハチが鳴く。
「ちょ、東堂くん!」
慌てて立ち上がり呼び止めると、気だるげに東堂くんが振り向いた。
鋭い瞳が機嫌悪そうに細められる。
「…あの、「あんたうるさい。…巻き込むな」
そして今度こそ一度も振り向くことなく公園を出ていった。
暫くココアちゃんの吠える声が聞こえていたけど、やがてそれも聞こえなくなる。
…今まで、人と仲良くなることなんて簡単だと思ってた。
こっちが仲良くなりたいと思って接すれば、相手も答えてくれるものだと思ってた。
…でも、それはただ単に、私が恵まれた環境にいただけだったのかも。
…自分の領分に、一歩も相手を踏み込ませない。
踏み込めないし、踏み込もうとすればするほど返ってくるのは冷たい視線。
「…どうしたもんかね、ハチ」