東堂くんは喋らない。
…山本の言葉が痛いくらい胸に突き刺さる。
くそ。いいこと言うじゃん。山本のくせに。
「わ、私だって…そう思う。でも…」
「あー、でもとか、もう聞き飽きた!お前今日から“でも”禁止な!」
「えぇ?」
「格好ばっか気にしてんじゃねーよ。どう思われるかばっかで動いてんじゃねーよ。
かっこ悪くていいんだよ!」
そして山本は「決まった」とばかりにニヒルな笑みを浮かべて
「…じゃ、頑張れよな。俺はこっから別方向だから…アディオス」
夕暮れの中、立ち去っていった。
…最後のがなければもっとカッコよかったのに。残念だ。
山本の言葉が頭をグルグルしたまま電車に乗って、いつもの駅で降りる。
ふと足を止めたのは、あの公園の前だった。
誰もいない公園のベンチに座る。空を見ると、まだ明るい空にいくつか、星が瞬いているのが見えた。
…山本の言っていることは最もだと思った。
そして、私の思っていること、全部言い当てられすぎて驚いた。やっぱりアイツは、超能力者なのかもしれない。
でもやっぱり怖いんだ。
今更気持ちを伝えて、東堂くんに嫌われるのが怖い。傷つくのが怖い。
でも…
夕暮れが、いつかの放課後に重なる。
『俺がお前のこと好きだって言ったらどうする?』
…東堂くんも、この怖さを乗り越えて言ってくれたんだろうか。