東堂くんは喋らない。
そう一度思ったら、次々と思い出された。
東堂くんの緊張をはらんだ声も瞳も、力強くつかまれた腕も。
“好き”って伝えることが怖い。それって当たり前のこと?
“だって、嫌われたくない”。きっとそれも、当たり前のことだ。
だけどそれを乗り越えなきゃ、次には進めないのかな。
ゆっくりベンチから立ち上がる。
“でも”
自分を守ることばっかり考えて、立ち止まるのはもうやめた。
怖くても、次に進みたいから。
心の中のモヤモヤが、今度こそ本当に晴れた気がした。
かっこ悪くていい。だから次に進もう。