東堂くんは喋らない。
「っ待って!!」
グイ、と反射的に東堂くんのワイシャツをつかむ。
あまりに強く引っ張りすぎて、東堂くんが「うげっ」と変な悲鳴をあげた。
「………なんだよ」
変な悲鳴が恥ずかしかったのか、東堂くんが少しだけ機嫌悪そうに私を睨む。
「…あ、あの」
言わなきゃ。
もう、いつまでもウジウジしてなんていられない。
「……今日」
「…うん」
「今日、ココアの散歩するっ!?」
「……は?」
東堂くんがその一文字を発するまで、数秒の間があった。
まるで、急に何を言い出すんだとでも言いたげな顔。
だけど、私の真剣すぎる表情にちょびっとだけ視線を逸らして
「……するけど」
と答えてくれた。
「じ、じゃぁ今日…4時半に、いつもの公園に来て」
「…え?」
「お願い」
私の瞳と、東堂くんの瞳がぶつかりあう。
「…分かった」
東堂くんが何か覚悟を決めたように、ゆっくりと頷いた。