東堂くんは喋らない。
「強者すぎるわ、東堂一哉…。
この私が誰かと仲良くなれずに悩む日がくるなんて…!」
「さすがの香弥でも東堂は無理かー。
まぁ、あいつホンット喋らないもんなぁ」
東堂くんに朝から16戦(話しかけた数)16敗(見事シカトされた数)を喫した私は、今年から同じクラスで仲良くなった峰岸柑奈(ミネギシカンナ)に弱音を吐いていた。
なんと柑奈、東堂くんと同中出身なのである。
「ま、諦めなよー。東堂は誰にでもあんなんだから。基本シカトだから」
「あっ諦める…!?この私が!?ありえない!
友達5000人つくることが目標なのにー!」
「え、何その目標…バカっぽ…」
ドン引きしている柑奈を尻目に、私は窓際の席で読書をしている東堂くんを観察。
何やら分厚そうな本の表紙には『宇宙137億年の謎』と書いてある。
サラサラとした黒髪は、前髪がちょっと長め。
その奥に覗く瞳は切れ長で二重。
私よりも断然白い肌は、透明感が半端ない。
そう、東堂くんてば、実はなかなかのイケメン!だけど…
「東堂くぅ~ん、ライン教えて~?」
「………」
「ねー、聞いてる?」
「………」
「あの…」
「………」
東堂くんのシカト攻撃に屈した女子がまた、彼の元を去っていく。
あーあ、今話しかけにいった子、けっこう可愛かったのに…。
そんなに『宇宙137億年の謎』が気になりますか!
私的にはあんたの方がよっぽど謎なんだけど!!