東堂くんは喋らない。
「ココア…大丈夫?」
「…あー」
東堂くんが腕の中のココアを心配そうに覗き込む。
ワンッ!とそれに答えるように、ココアが吠えた。
「……大丈夫そうだな」
フッと東堂くんの頬が緩んで、私もすごくホッとした。
よかった…。
「ご、ごめんね。私のせいで…」
「………別に。お前のせいじゃねーだろ」
東堂くんがゆっくりとココアを地面におろす。
ハチがそんなココアにすぐさま駆け寄って、仲良さそうにじゃれ合っていた。
ハチ…ココアと違ってあんたはー!
「…お前は」
「え?」
そんな二匹を見ていた私に、東堂くんがぶっきらぼうに聞いた。
「…お前は、何もないわけ」
「え、あ、あぁうん…何もないよ」
「………あっそ」
すぐに視線を逸らした彼が、ココアの傍にしゃがみこむ。
その表情は見えないけれど…
なんだか嬉しかった。
東堂くん。心配してくれたんだよね。