東堂くんは喋らない。
東堂くんはやっぱり来ない?
スゥ、と小さく息を吸う。
鮮やかなオレンジ色のボールが、そっと手を離れていく。
まっすぐ進むはずだった、そのボールは
ガコンッ…
「あーあ」
後ろから聞こえる落胆の声。
「…香弥…
ボーリング下手すぎ!」
「…すみません」
今日は二年生になって第一回目のクラス会。
みんなでボーリングに来てるんだけど…
なんと3ターン連続でガターの私は、チームの足を引っ張りまくっている。
「ごめん!ホンットごめん!次こそはストライク出すから許してー!」
「いや、絶対ムリでしょ」
クールにそう言い放った柑奈が、紫色のボールを持つと綺麗なフォームからボールを放つ。
カコーンッ!
見事真っ直ぐ進んだボールが、ストライクを叩き出した。
「すごーい柑奈!プロ!師匠!コツは?」
「コツぅ?うーん、ボールに愛情を込めること」
おぉ…なんか深いな…
「ちょっと飲み物買ってくるねー!」
喉が渇いた私は、みんなに声をかけると自動販売機に向かった。