東堂くんは喋らない。
そんなことを考えながら、いざ投げようとフォームに入った…瞬間
「うわぁっ!?」
隣のレーンから聞こえた山本の絶叫に、思わずガクッと力尽きた。
「ちょっと山本ー!何突ぜ…ん…」
山本だけじゃない。
皆が驚きに満ち溢れた表情で何かを見つめていて
その視線をたどった瞬間、思わずボールを落としそうになった。
だって
「と、東堂…!?」
「うそ、東堂じゃん」
「アイツ来れないんじゃなかったの?」
「つーか何で今更…」
ざわざわしたどよめきの矛先。
私服姿の東堂くんが、むんぐりとした表情で立ち尽くしていた。
そんな彼と私の視線が、一瞬ぶつかる。
でも、すぐにそっぽを向かれてしまった。
東堂くん…
「来てくれたんだ!」
ボールを持ったまま彼に駆け寄ると、チラ、と東堂くんが横目を向けた。
「…………べつに。
…暇だったから」
「ふーん!そっか!暇だったんだー!」
そんな相槌をうちながら、零れてくる笑みを抑えることができない。
「…なんかバカにしてる?」
「してないよ全然!はい、これ!」
ボールを差し出すと、不審そうな瞳でそれを見る東堂くん。
「東堂くんの番!」