東堂くんは喋らない。
「………意味わかんないんだけど」
「何で!ボーリングに来たらボールを投げるのが当然でしょ?
ホラ、はやくー!」
怪訝そうな東堂くんに無理やりボールを押し付けて、レーンの前まで背中を押す。
「おいっ…」
「ストライクとったらすき家奢ってあげる☆」
ピースと共にそんな言葉で送り出すと、むすっとした彼の表情が、一瞬だけ和らいだ気がした。
「…今の言葉。
忘れんなよ」
投球フォームに入った東堂くんの手から、流れるようにボールが放たれる。
それは真っ直ぐ、ぶれることなく中心を貫いて
【ストライク!おめでとう!】
次の瞬間には、そんな言葉がレーンのすぐ上にある画面を飾った。
「すっ…
すごい!東堂くんすごい!何!?実はプロボウラー!?」
「…………なわけないじゃん。アホなの?」
呆れたような顔の東堂くんが振り返る。
そしてはぁ、と一つため息をつくと
「帰る」
そう言い放って、スタスタと出口に向かって歩き出す…ってちょっとー!