東堂くんは喋らない。
今度…すき家な?
あーっ!そうだそうだ!そういえばそんなこと言った私ー!
ガーン、と寂しいお財布の中身を思い浮かべていると、ポン、と後ろから誰かに肩を叩かれた。
振り向くとちょっと驚いた顔の柑奈。
「…びっくりした。アイツも笑うんだね」
「え…」
柑奈だけじゃない。
気付くと、クラス全員(主に女子)が色めきたっているのが見えた。
「み、見た…?今東堂笑ったよね!?」
「てか笑うと意外とフツー…?」
「フツーどころかめっちゃイケメンじゃなかった!?」
「何あれ!?実は隠れイケメン!?」
…そ、そっか。みんな東堂くんの笑った顔見るの、はじめてだったんだ。
といっても私もつい昨日見れたばかりだったんだけど。
「…香弥?」
立ち尽くしたままの私に、不思議そうに声をかけてくる柑奈。
「どうかした?ボーッとしちゃって」
「う、ううん。何でもない!」
…なんでだろ。
なんだか、一言で言えないような、複雑な気持ち。
「…っていうか、ストライクとったから焼肉奢るのはなしだよね!?」
「はー?ストライクとったのは香弥じゃなくて東堂でしょーが」
この気持ちの正体に気付くのは
もうちょっと
先の話だったりする。