東堂くんは喋らない。
東堂くんとモヤモヤなわたし。
「東堂くん!」
ほら、今日もまた。
隣の席の彼は、女子に囲まれている。
「今度よかったらさ、またうちらとボーリング行かないっ?」
「東堂くん、めっちゃボーリングうまかったよね~!よくやるの?」
「てかライン教えてよっ!」
「……………」
そんな女子たちの言葉を全てシカトし、今日も読書に励んでいる彼。
「…あーあ、ダメかぁ」
女子たちは漸く諦めたようで、東堂くんから離れていった。
あの、ボーリンの日から。
こういうことが度々起こるようになった。
と同時に。
「ね~香弥、お願いっ!東堂くん紹介して!」
「紹介って、うちら同じクラスじゃん」
「だって東堂くん香弥とは話すじゃん?
あのボーリングの時にも仲良さそうだったし!」
ね?と可愛らしく小首を傾げる女子に、う、と思わず言葉に詰まってしまう。
「とりあえず、コレ渡してくれるだけでいいからっ!」
そして強引に小さく折りたたまれたメモ用紙を手渡すと、トイレを出て行った。
はぁ…。思わずため息。
――最近急に、女子にこういうことを頼まれるようになってしまった。
東堂くんがいる教室以外の場所に行ってはつかまって、紹介してとか話すきっかけを作って欲しいとか…
今日のこれにだって、たぶんラインのIDとかが書かれているんだろうな。
手の中にあるメモ用紙を、ちょっと憂鬱な気持ちで見つめる。