東堂くんは喋らない。





「東堂くん」




隙を見て、読書に励む彼に話しかける。




チラ、と東堂くんが少しだけ視線をあげた。




「…………なに」



「これ渡して欲しいって頼まれたんだけど」



「…………コレ何」



「え?いや何って、それは知らないけど…
とにかく受け取ってよ、私は頼まれただけだから」




ほら、とそのメモ用紙を差し出すけど、不躾な視線を向けたままそれを受け取ろうとはしない彼。




「………」



「ちょっとー、どうしたの?」




ここは教室。


周りの目もあるかもだし、チャッチャと受け取っちゃって欲しいんだけどな。




「……いらない」



「え?」




「………だからいらない」




不機嫌そうに言われた言葉に、一瞬唖然とした。




い、いらないって




「何でよー!中も見てないのに」



「…………」



「ちょっと」




「…………」




「無視!?」




「…………」





それから、彼は口をきいてくれるどころか、視線を向けてくれることさえなかった。




もー…





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