東堂くんは喋らない。
「あのさ、東堂くん…」
「…ん?」
フワリと東堂くんが瞳を向けた、その時。
「香弥~!」
「お、美和子?」
いつになくハシャいだ様子で同じクラスの美和子がやってきた。
もうすぐ授業始まるのにどうした。
「あのさっ、今度またボーリング行かないか、って話出てるんだけど。香弥も行かないっ?」
「へー、そうなんだ!いくいく~!」
「それで…」
チラ、と急にモジモジしだした美和子が私の隣を見る。
それで全て分かってしまった。
あー…なるほど。
私に彼を誘えってわけね。
自分で誘えよって思うけど…まぁ仕方ないか…。
「…あの。東堂くん」
「………なに」
ペラリと東堂くんの本を捲る音と、素っ気ない声。
「東堂くんもこない?ボーリ「行かない」
即答!むしろ食い気味!
私の目の前では、ガーンと効果音が聞こえてきそうなくらい美和子がショックを受けている。
あーもう!どうしよう。