東堂くんは喋らない。
東堂くんと君の過去。
「はぁああああああ~……」
「…なっがいため息。珍しいね、香弥がこれを前にして元気にならないの」
呆れたような柑奈と私の目の前にそれぞれ置いてあるのはホットケーキ。
放課後によく来るカフェの看板メニューは、普通よりもだいぶ分厚めなことで有名。
フワフワした生地の上には、バニラアイス、生クリーム、イチゴ、マンゴーとボリュームたっぷり。
いつもなら大抵の悩みは、このこを見た瞬間に吹き飛ぶんだけど
「なんでだろう…?やっぱ5月病?」
今日はあんまり気分が晴れない。
「…どーせ東堂のことでしょ」
ほら、と私にフォークとナイフを差し出しながら柑奈が言った。