東堂くんは喋らない。
東堂くんの最初の一言。
「うおおお~!」
そして翌日。私は廊下を全力疾走していた。
なんと、昨日の夜に慣れない読書に励んだせいで(宇宙戦艦ヤマト)30分も寝坊してしまったのだ!
どうしよう間に合わないよ~!
半泣きになりながら廊下の角を曲がった瞬間
ドンッ…
前を歩いていた誰かに思い切り激突してしまった。
「…っ」
その人が吹っ飛ぶ。
て、てか前歩いてたの!?存在感薄すぎて全く気付かなかった…!
「ご、ごめんなさい!大丈夫です…か…」
慌てて謝った私と、振り向いた彼の視線がぶつかった。
…と…
「東堂くん!?」
「………」
東堂くんは無言で立ち上がると、パッパッと軽くブレザーを払った。
そんな彼の鼻から、ツーと一筋、赤いものが…
「ギャァアアアー!」
「!?」
「ち、ち…ち、血が!鼻血出てるよ東堂くん!!」
「………」
無言で手で鼻血を拭った東堂くんが、無表情でそれを見る。
ってか何でそんな冷静なの!?
「ま、待って!今ティッシュ…うわっ!」
慌ててカバンを開けた私だったが、慌てすぎて中の物が全部床に散らばってしまった。
「………」
東堂くんが無言で、その中の一つを拾い上げる。