東堂くんは喋らない。
東堂くんが無言で、じっと私を見つめている。
あまりに長く見つめているものだから、東堂くんが固まってしまったんではないかと心配になった。
「あの…東堂くん?大丈夫?」
ヒラヒラ、東堂くんの前で右手を振る。
「…あのさ、」
「っ」
すると、不意にその手首をつかまれて。
呼吸が止まった。
距離が、近い。
「…俺……」
「一哉?」
“いちや”、というのが、あぁ東堂くんの名前だ、と私が認識する前にバッと彼の手が私から離れた。
振り向いた彼の瞳が、大きく揺れる。
その視線は公園の入り口で立ち尽くす、ひとりの女の子に注がれていた。
「…優月(ユヅキ)?」