東堂くんは喋らない。
はじめは無視されたり、でもそのうち物を隠されたりするようになって…。
私見てられなくて、一哉に「助けて」って言ったんです。
そしたら一哉、みんなの前で「くだんないことやめろよ」って翔太のこと、庇って。
それがキッカケで、翔太のイジメはなくなったんだけど、かわりに一哉が次のターゲットになっちゃって…。
しかも…翔太まで…それに、加わるようになって。
…一哉へのイジメは、そんなに長く続かなくて。
でも一哉と翔太はそれから二度と…話さなかった。あんなに仲良かったのに。
私も翔太と、すぐにダメになって。
ずっと一緒にいて、これからもずっと一緒にいると思ってたのに…それからずっとバラバラ。
一哉、それをキッカケに、人に心を閉ざすようになって。
私とも目も合わせてくれなくなった。
優月さんの話は、私が思っていたよりずっと深刻で。ずっと痛かった。
東堂くんは、信じていた親友に裏切られて。
それで、人を信じられなくなったんだ。
「…最低なんだよ、私」
俯いた優月さんの瞳から涙が一粒、零れる。
「一哉に助けて、って言ったくせに。
一哉が苦しい時に、何もできなかった。
ただ見てただけ…私が絶対、一哉を助けてあげなきゃいけなかったのに」