東堂くんは喋らない。
いちばん辛かったのは東堂くんだと思う。いちばん苦しかったのも。
でも、優月さんはたぶん、それからずっと自分を責め続けてて。
その痛みが、痛いほど伝わってくるから…。
優月さんと別れて、家への道を歩く頃にはすっかり夜になっていた。
手の中にあるのは、帰り際に優月さんから渡された優月さんのラインIDと、電話番号が書かれている紙。東堂くんに、渡して欲しいって。
優月さんはずっと後悔してる。あの時何もできなかったことも、ずっと謝れなかったことも。
東堂くんは……まだずっと、自分はひとりだと思っているの?
「…おい」
「!?!?」
ボンヤリ歩いていたら、突然横から誰かに腕をつかまれた。
ふっ不審者!?痴漢!?変質者!?!?
「ギャー!!はなして変態~!!」
「へんたっ…!?ちょ、やめろバカッ…!」
思い切り髪の毛を引っ張っていたその腕が、力強く引き離される。
「俺だよバカ!!」
「…は…?」
聞きなれた声に、我に返ると。
「と、ととと東堂くん!?」
「…変態じゃないから」
痛そうに頭を触る東堂くんが、怒りに満ちた瞳で私を見下ろしていた。