東堂くんは喋らない。
そしてそのまま歩いて行こうとする東堂くん。
「待って!」
慌てて腕をつかんで、引きとめた。
「優月さん、どうしても謝りたいんだって、東堂くんに」
「………」
「東堂くんが辛いとき、何もできなかったこと」
「…おまえ」
東堂くんの冷めた瞳が、突き刺さる。
「…ごめん、きょう全部聞いた」
「………」
「あの…」
「…別にどうってことないでしょ」
私から目を逸らした東堂くんが、どこか自嘲的に呟いた。
「…全然大したことじゃないでしょ。全然、なんでもない…」
「なんでもなくなんてないよ」
ギュッ、と東堂くんの腕をつかむと、驚いたように私を見た。
「…辛かったね。
だけどもう、一人じゃないよ」