東堂くんは喋らない。
東堂くんとバーベキュー。
「ハイッ!みんな注目~!」
いつの間にか教壇に立っていた山本が、そんな声をあげたのは夏休みに入る前日、終業式が終わった直後のことだった。
「突然ですが、バーベキューしたいと思いますっ!」
バーベキュー!?
おお、いいね、楽しそう、そんな声が教室のあちこちからあがる。
バーベキューかぁ…
「いいね!やろやろー!」
もちろん私も大賛成!
「よしっ、そんじゃぁ決行は3日後だから、全員強制参加な~!」
そして山本は勝手にそう決定すると、満足そうに教壇をおりた。
強制参加…
「もちろん東堂くんも、来るよね?」
チラリと隣の東堂くんを見る。
彼はいつものように難しい顔して分厚い本を読んでいたが、私が声をかけるとほんのちょっとだけ視線をあげて
「………えー」
明らかに嫌そうな声を出した。