新選組へ ~ 連理之枝 ~
見つけたもの
【沖田】

誠くんが屯所に戻ったと、一くんが知らせてくれた

でも、僕は会いに行かなかった


誠くんが、紅葉様を抱きしめて放さなかった

あの時、何もしてやれなくて


誠くんが可哀想で


徳川に生まれ、存在を隠され

想い人とも結ばれず

腕の中で看取るなんて

僕は、誠くんが羨ましいと言ったことを

申し訳なく思う


誠くんが可哀想だ


「総司」

土方さん!?

「どうぞ」

スーー パタ


「体調は?」

「いいですよ」

「他の奴らには、話していないが
誠は、やはり徳川の生まれらしい
血筋がいいのだとさ
春歩や夏弥と呼ばれていたらしい
誠…首を切ろうとしたんだ
止めに入った慶喜様が、血を嗅がせ
記憶を奪った
それが、目を覚ましてみたら
口もきかねぇし、飯もくわねぇ
抜け殻になっちまってよ
生きる気力まで失ったようなんだ」

「そんな…」

「とにかく、飯は俺が、無理矢理にでも喰わせる
事情を知っている、山南さんと総司で
元気づけてほしい」

「出来るでしょうか?」

「総司なら出来る!
そう思ったから頼んでんだ!!」

「ふふっ 土方さん根拠は?」

「近藤さんも同じ意見だ!」

「近藤さんが言うなら、そうかもしれませんね!!」

ゴンッ

「痛いじゃないですか!!」

「フン!!とにかく!!頼んだぞ!!」


スー パタン


「痛いなぁ」

拳骨の落下地点をスリスリする

昔から、手加減してくれて、この痛さ

何度されても、この痛みには、慣れない



誠くんに、どう接したらよいものかと

思案した



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