新選組へ ~ 連理之枝 ~
紅葉狩りから
【慶喜】


紅葉狩りから5日たった


夏弥の体調は、悪化するばかり

なのに、医者はいいと拒む


目に見えて痩せている

食事が食べられず、水すら飲めない


世話役の女中は、申し訳ないと泣く



「夏弥…何か食べぬと、死んでしまうぞ」


「い…らな…い」


消えそうな声で言った


無理矢理、医者を呼ぼうかと考えていると

「よし…の…ぶ…」

「なんだ?」

「手を…握っ…て」


必死に手を握った


「はぁ……ふっ……は」

息継ぎも上手く出来ていない


「あっ…り…が…と…う」


ニコリと笑った


笑ったまま「も……へ…いき」


そばにいると言うと、気を使うから

どっか行けって、辛いのに口が悪い


お芳も夏弥の姿が見えないので不安がる


隠しても仕方ない


「悪化して、食事がとれんのだ」

すると

「甘いもの好きでしたよね?
あんみつの汁とか、水菓子とか
好きな物なら少しくらい食べれませんか?」

「なるほど!!手配しよう!!」


お芳の助言通り、あんみつの汁を

湯呑みに半分近く飲めたと女中が

喜び報告にきた

日ごと

ちょっとずつ、口にできるようになり


起き上がれるようになった


「夏弥、よかった」


夏弥に口づけをした

「俺が死んだら、かなしい?」

「当たり前だ!!
夏弥…縁起でもないことを言うな!!」

「慶喜…俺を自由にして」

「……すまん…できぬ」

「…… 言っただけ」

そう言って、涙を流していた

「新選組に会うか?」

首を横に振った

「もういい」


小さな声で言った

はあ……うぐっ……はっ……はっ……


夏弥は、息が出来ぬようで、苦しんでいた


「誰か!!誰か!!医者を呼べ!!」


このまま、死なせてなるものか!!

俺にしがみつき、苦しいはずなのに

イヤイヤと首を振る


「死んではならん!!」



夏弥を抱きしめた

こんなに細くなって…


「夏弥…しっかり息をしろ!!」


「だいじょ…ぶ…はあ…ね?」


はあはあと息を整える


「眠いから…医者はいい」

「どうして、そんなに頑固なんだ?」

「慶喜…ふふっ心配しすぎ……」


目を閉じクタッと俺の腕の中で寝始めた

布団に寝かせ、到着した医者を断った




気持ち良さそうに眠っている夏弥を見て

願いを叶えてやりたいと思った


たとえ、叶わなくても


元気になるなら、自由にしてやると

言ってやりたい



そう思った













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