新選組へ ~ 連理之枝 ~
【慶喜】


新選組の1件が片付き、東宮様がこちらに
おられるのが、残り5日となった

恒例となった朝の散歩

「お芳様!?見て下さい!
ほら!可愛らしい花ですよ!
昨日は、咲いてなかったですねぇ!」

「あら!?本当ですね!!
東宮様は、よくお気づきになりますねぇ」

すっかり仲良くなった2人

2人を見ていると、心が穏やかになる



ひとりで星見をしようと廊下を歩いていた

向かう先は、夏弥の部屋



そこにいた先客に驚いた



「東宮様!?」


俺を見て、少し笑って


「ご一緒してくれますか?」

「喜んで…あの?なぜ、ここに?」

「夏弥を偲んで見ようかと…ふふふっ
本当は、慶喜様に会えるかなと…」


可愛らしく、首をコテンと倒しながら

言った

俺の心臓は、高鳴った


「会えるものですねぇ
慶喜様は、よくここに?」

「ここは、特別な場所です
俺の夏弥がいた場所です」

「心がくすぐったいですね
あははっ 少し本音を言います
慶喜様、俺…覚えていますよ
俺にとっても、貴方とこの場所は、特別
貴方とずっと一緒にいれるなら
女子として生きてもいいと…
心から、思っていました
ふふふっ もう…叶いませんけどね!?」


どうして…


夏弥が、そこまで思ってくれたことに
俺は気づかなかった…


抱きしめたくて、近づいた


「明日、戻ります」


いやだ…


「新選組をよろしくお願いします」


なんで…


「夏弥…お前、新選組の為に…わざと
なんてことを!!」


中川宮の文には、自由になるとあった
俺達を信じさせる芝居だった

「どうなるのだ?お前は…」

夏弥は、にっこり笑って

「さぁ…ふふふっでも、満足です!!
慶喜様とお芳様との散歩は、楽しかった
新選組には、迷惑をかけましたが
償いもしました
佐々木と仲良くできたし
もう…いいですね
やりたかったことは、やれましたから」

「ならん!!」 ガバッ

逃がすものか!離してなるものか!

「慶喜様…」

「夏弥!!お前は、俺のそばにおれ!
ずっと…一緒にいてくれ!!」

「慶喜様…嬉しいお言葉…ふふふっ」

夏弥の目からは、静かに涙が流れた


自然と唇が重なり、抑えられなくて

夏弥を抱いた

想い合っているのに

結局、手に入らない


「お別れです」


「ならん!!夏弥…」


「抱いてくれて、ありがとうございます
幸せです!!
ふふふっ これからは、仲間でいましょう
新選組みたいに、強くありましょう
離れていようとも、俺達は仲間!!」


男らしく凛とした、振る舞いで言った


「仲間…ふっ
佐々木もか?」

「チッ 仕方ない」

相変わらず、佐々木の扱いは雑

「お芳様も仲間です!」



他愛ない話をいつまでもした…


翌日、急遽東宮様は、御所へ帰られた



俺は、別れとは思わない…


思ったら、そうなってしまいそうで


だから、笑ってお見送りをした



「いつでも、いらして下さいませ!」



お芳の言葉を横で聞きながら

精一杯の笑顔で…

心は、泣いていた






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