新選組へ ~ 連理之枝 ~
それは…睦仁の影武者になることだった


政に関わることは、正直嫌だった

睦仁としてなら、まぁいいか

睦仁は、本物の東宮であり、皇太子

俺より5つ歳下だが

虚弱で、女達と遊戯をするような

優しい性格だ

俺は、気が短いうえ、口調も乱雑

遊戯よりは、武芸を好む


何の悪戯か、睦仁は俺と同じ首を怪我した

同じ着物で、顔合わせをしたときは

鏡かと思ったほどだ

それほど俺達は、似ていた


俺は、東宮の影武者として


己を捨てた





愁迦は、約束通り、御所を出たのだと

桂宮様と中川宮に伝えられた


しばらく誰にも会わないように

天子様の部屋をひとつ、使わせてもらっている






これで、もう愁迦・柊花には、戻れない

夏弥も春歩も、誠も…



「ゲホッ ケホケホ ゴホッ ケホ」



風邪をひいたかな…



桜が咲き始めたとはいえ、さすがに
夜は、肌寒い


布団の中でぶるっと、震えた


「土方さん…寒いよぉ…」


無意識にこんな言葉がでるなんて…


失笑した



諦めたつもりの


仲間、家族が恋しいなんて


そういえば、慶喜のことも諦めきれなくて

迷惑かけたよな…


大丈夫…


ちゃんと、影武者として


「ゲホッ ゲホッ グェッ」



口を押さえた手にべっとりとついた血


そういえば、総司の労咳を貰ったんだった


こんなに進行してたのか…


だとしたら、総司は大丈夫だろうか


俺は、ひとつきあれば、治るだろう


総司の労咳が再発しないように


願いながら、そのまま意識を手放した
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