新選組へ ~ 連理之枝 ~
迎えの日



家茂と紅葉は、一度も顔をださなかった

慶喜に気を使ったんだろう

慶喜もあれから、来なかった


来るのは医者と、世話人だけ


庭で、迎えを待つように言われ

桜をずっと見ていた


「誠!!」


近藤さんの声に振り返る

安心したように、土方さんが笑う


「すみません!なんだか、わからないうちに、こちらにお世話になってしまって」

「体調は?」

「いいです!!」


「誠様…!!」 紅葉が走って来た


「ど……どなたか、存じませんが…」

「これ…あげる!!」

木彫りの桜

「俺に?」

「そうよ!大事にしてね!!」

「……はい」

紅葉は、こういうの作れない

慶喜様だ

「お上手ですね?」

「まぁね!」

にっこり

「ありがとうございます」


さよなら… 紅葉


さよなら…家茂



さよなら…慶喜





桜が散るたび、俺の心も欠けている



慶喜様…どうか、お幸せに……
< 97 / 323 >

この作品をシェア

pagetop