しつこい、それでも君に恋をする
『何度お気持ちを言って頂いても、私はあなたのこと』
『俺ねー、土屋秋也って名前なんだけど?』
『あ……土屋君、私はあなたとのこと』
『秋也って呼んでいいよ?』
…………。
何故、こんなにも彼はにこやかな顔をしているのでしょうか?
何故、恋人でも友達でもない私に、名前呼びをしてもいいというのか。
『あの…私は土屋君のこと、好きな人に思えなくて、だから』
『それは冬香ちゃんが他に好きな人を作っちゃダメ、とか考えてるからじゃない?』
……私が好きな人を作っちゃダメ…?
目の前の彼はにこやかな顔のまま、私から廊下側に視線を移した。
私は彼の視線を追って、廊下側に視線を移すと、そこには親友の夏美と元彼のハルが笑い合っている姿が映る。
ハルが何か面白いことを言ったのだろう、夏美が幸せそうに笑い、
夏美がそれに何か返したのだろう、今度はハルが幸せそうに微笑んだ。
『冬香はまだハルのこと、完全に吹っ切れてないんだろう?』
私は彼のその言葉を耳に入れながらも、視線はその二人から外すことが出来なかった。
『もう望みないんでしょ?
冬香ちゃんがハルの手を離した、あの瞬間から』
そう。
彼が言った通り、私がハルの手を離したー…。
ハルは夏美が好き、夏美もハルを想ってる…
その事実を思い知って、だから大事な二人には幸せになってもらいたくて、それで私がハルに“別れよう”…そう言ったんだ。
『…そうよ?
私がハルと夏美に幸せになってもらいたくて、ハルに別れを切り出したの…』
『冬香ちゃんってさー?
すっげーバカな奴、だよね』
え?
今のどこにバカだと思わせる要素があったの?