雨恋~雨のちキミ~
※※※



昨日降り始めた雨は朝になっても止むことがなく、大好物の粗挽きウインナーを齧り窓の外で降りしきる雨音に耳を澄ませる

誰も座っていないリビングのソファの前に鎮座しているテレビから、お天気お姉さんが『梅雨入りしたとみられる』と梅雨入り宣言をしていた


「あー、もー!梅雨入りかぁ…。雨降ると髪がまとまらんから嫌やわー」


さっき2階から降りてきたお兄ちゃんが、髪の毛をワックスで整えながらバタバタとせわしなく動き回っている

目玉焼きの黄身の部分にお箸を突き刺しながら、日課になっているその光景を横目で見た


「もっと早く起きてきたらえーのに」


スーツ姿のお母さんが、お兄ちゃんを一瞥し


「ほんならお母さん行ってくるから、ちゃんと戸締りしてってな」


「「はーい」」


毎日同じセリフを残して仕事に出掛けて行く


「なー!早よ食べな、遅刻すんでー」


洗面所に引っ込んだお兄ちゃんに、大きな声で促した

あたしは近いからいいけど、お兄ちゃんは電車通学

あと5分もしたら出掛けないといけない時間だ


「わー(分か)ってるって」


「ぶっ」


戻ってきたお兄ちゃんの頭を見て、口の中で咀嚼していたバナナを噴き出しそうになった
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