雨恋~雨のちキミ~
玄関を出ると、ちょうど家の前を里やんが通り過ぎる


「あっ、おはよー」


あたしがドアを開けたことで、彼もこちらを一瞥し足を止めた


「うぃーっす」


気怠そうに返事をし、はぁと溜息を吐く


「昨日大丈夫やった?」


「んー。ちょっと濡れたけど、浴室乾燥したらすぐに乾いた」


昔は、梅雨の時期なんて洗濯物が乾かない

なんて言ってたみたいだけど

今は『文明の利器』のおかげで、そんなこと気にならない


ってお祖母ちゃんが言ってたな


「あ…」


うんうんと一人で頷いてたら、あたし達の横をスッと自転車が通っていった


「どしたん?」


口から漏れた言葉に、里やんが反応する


「え…いや、今の………水月先輩」


雨脚が強くないせいか、自転車のスピードは少し早くて

その後ろ姿は、随分遠く離れてしまった


「よー分かったな」


「だって好きやもん。好きな人の姿なら、一瞬で見つけられる」


昨日の先輩とのやり取りを思い出し、ギュッと胸が締め付けられる


「………ま、確かにすぐ見つけられるけどな」


隣を見上げると、傘を少し傾けもう見えなくなってしまった水月先輩の後を追う虚ろな瞳が見えた
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