雨恋~雨のちキミ~
少し耳を離している間にも会話は進んでいるらしい


「江梨さんかって、保健室でカフェみたいなことしてるやん」


え、江梨さんっ?!


会話を聞き逃さないよう、耳を近付けたのも束の間

今度は水月先輩が渡邊先生のことを名前で呼んだことにショックを受ける


「身内には優遇せーへんの」


「俺、身内ちゃうし…」


「そのうち身内になるやん」


「………」


「私のこと、そんなに嫌い?」


「………んなことないけど…。もうめまいもせーへんし、教室戻るわ」


あわわわわ

どうしよ…


聞きたいような聞きたくないような会話をずっと立ち聞きしてたけど

先輩が中から出てくるなんて想定していなかったから、ドアの前で立ち尽くしているあたし


どこか隠れる場所!


キョロキョロと辺りを見回したけれど、そんな場所なんてなくて

今歩いてきた風を装い、ドアに手を伸ばした


「わっ!」


「ひゃっ」


鉢合わせすると思ってなかった先輩は、心底驚いた表情をしている

あたしも一応、驚いた声を出してみたりなんかして


「ビックリしたー。大丈夫?」


驚きながらも、首を傾げて心配してくれる水月先輩

その優しさに胸がキュッと締め付けられた
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