雨恋~雨のちキミ~
「………いえ…別に…」


まさか、渦中の人に先輩のことなんて聞けるはずもない


「雨やから余計に憂鬱になるんかしら」


首を傾げ、窓の外に視線を向ける先生


確かに

この雨はただでさえ気分が沈んでしまう


「あ!ひょっとして恋愛のこと?」


閃いたのか声を弾ませ、あたしの方に振り返った


「………そう、ですね…」


「何なにぃー?いつでも相談乗るで」


先生みたいな大人からしたら、あたしら高校生の恋愛はどういう風に映るんやろう


お金も持っていない

社会経験だってない

何より───

恋の駆け引きなんて分からない

何角関係ものドロドロした愛憎劇や、思わず感情移入してしまいそうな悲恋、より取り見取りの逆ハー状態、誰もが憧れるシンデレラストーリー

そんなものは皆、ドラマの中だけの話だ

現実では参考にすらなりそうにない


「先生は………」


「ん?」


「彼氏、居るんですか?」


直球


「居るよ」


そして、即答


「もうすぐ結婚するんやけどね」


嬉しそうに頬を緩め、右手の親指と人差し指で左手の薬指に触れた

そこには、石が埋め込まれた銀色の指輪


「婚約指輪…ですか?」


「んーん。付き合い始めてすぐにもらったやつ。誕生石入りやねんけど、私の誕生石ダイヤでさ。お金もないから、ちっこい石のシルバーリングやねんけどね」


指輪をクルクル回しながら、愛おしそうに見つめる瞳に

彼氏のことが大好きだということが、これでもかというほど伝わってくる
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