雨恋~雨のちキミ~

-2-

「どないしたん、その指」


エントランスで会った里やんが目を丸くした


「あー、体育の時間にちょっとボーッとしてて…」


授業が終わり、下校時間

あたしの右指には、相変わらず包帯がグルグル巻かれている


「恵らしい」


「ちょっ…、あたしらしいって何なんよ!」


「んで?授業どうしたん」


あたしの抗議については無視らしい


「どうしたん、って?」


「ノート」


「ああ。隣の席の塩野くんがあたしの分も取るって言ってくれてんけど、先生が『職員室で他の子のノートコピーしたらええ』って言ってくれたから、コピーで済ませた」


「別にそこまで聞いてへんし」


眉を寄せ、急に不機嫌になる里やん


「何で怒ってんの?」


「別に怒ってへんし」


怒ってへんっていうけど、めっちゃ態度に出てるし


けれど、それを指摘するともっと不機嫌になることを知っているあたしは、それ以上追及することを止めた


「ん」


上靴からローファーに履き替えていると、視界に里やんの手のひらが入り込んでくる


「へ?何?」


何のことか分からず、中腰のまま顔を上げた


「鞄」


高校に入って2ヶ月も一緒に居るのに、里やんの言葉足らずな部分に理解できないこともしばしば

お調子者のお兄ちゃんとはタイプが違うから、扱いが難しい
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