雨恋~雨のちキミ~
「んーん。そんな勇気ない」


あたしも両手で手すりを持って足のかかとだけで立ち、ゆらゆらと左右に揺れる

左に振れると、里やんの体に体当たり


「痛いな」


「わざと」


「喧嘩売ってんのか?」


「冗談やん」


里やんやと、こんなに軽口叩けるのにな…


「あ、試合終わったで」


彼の言葉と共に終了を告げるホイッスルが鳴り、うちの高校が大量得点で勝利を収めた

手を叩き合い、喜ぶ男バスの部員達

その中でも水月先輩はキラキラして見える


かっこえーなー


じぃーっと見つめていると、先輩が顔を上げた


え…


バチッと目が合い、一瞬微笑んでくれたようにも見える

間違いかと思い瞬(まばた)きをしてみると、先輩は違うところを見ていた


やっぱり気のせいか…


そこでハッとして周りを見回す

誰もあたしを見ていないことにホッとし、またコートを見下ろした


先輩と目が合ったかもしれない状況をファンクラブの誰かに見られてたら、ソッコーで呼び出しくらいそうやもんな…


裏庭で大勢のファンに囲まれ問い詰められる状況を想像したら、背中に悪寒が走る

高校に入ってまだ2ヶ月

いきなり晒し者になんて、なりたくない
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