雨恋~雨のちキミ~
「あれ?」


自宅が見える距離まで来た時、玄関先に立つ2人の姿を見つけた

1人はお兄ちゃん

もう1人は………


…誰やろ…


ここからだと、黒い傘布と背中から下しか見えない

近付くにつれ聞こえてくるお兄ちゃんの声

それは、話し声というよりも怒鳴っているように聞こえる


「何かあったんかな」


隣を歩く里やんも不思議に思ったらしく、首を傾げた


「分からん」


「揉めてるっぽいけど…」


「揉めてるっていうより、何か怒ってるっぽい」


あたしが言うのも何だけど

お兄ちゃんはどちらかというと人を笑わせるタイプで、声を荒げるところはほとんど見たことがない


「お兄ちゃん?」


すぐ目の前まで来たのに、あたし達の存在に気付かないお兄ちゃんに声を掛けた


「あ、おかえり」


途端にいつものお兄ちゃんに戻る

頭上では相変わらずあたしのヘアゴムが揺れていて

さっきまでの怒鳴り声と可愛らしい姿のギャップに、複雑な心境


「何怒ってんの?」


「いや…。帰って来て寛いでたら、部屋の窓からこいつが家の前に居るのが見えたから───」


そう言ってお兄ちゃんが目の前の人物を指差すと

その人が、静かにこっちを振り返った
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