雨恋~雨のちキミ~
急に何なん?

…っていうか、先輩の前でいきなり下の名前呼ぶ?


そして、相変わらず何も喋らない先輩を見上げた

変な誤解をされていないか心配だ


「先輩?」


同じように里やんの方を見ていた先輩が、ハッとした表情であたしを見る


「あ…ゴメン………。あの、ちょっと話したいことがあって…」


話したいこと?


先輩との接点がないからか

首を傾げながら自分を指差すと、先輩は黙って頷いた


「あ…じゃあ、ここだと何なんで…」


手のひらを玄関に向け、先輩に中へ入ってもらえるよう促す


「えっ…と………。お邪魔…します」


「狭い家ですけど…」


ガチャンと音を立てて玄関のドアが閉まると


あれ?

あの水月先輩が、あたしの家に居る?

えっ………何で?


靴を脱ぎながら今の状況が頭の中に流れ込んできて、プチパニックを起こす


…っ、ぎゃ─────っ!!!

先輩と同じ屋根の下にぃっ!!!


顔が一気に熱くなり、後ろに立ったままの先輩を見られなくなる


「あっ、あのっ!」


「はいっ?」


あたしが急に叫んだからか、先輩の返事もなぜか敬語


「あっ…あたしのっ、部屋でも………。…だ、大丈…夫………です、か…?」


油が切れたロボットのように、ギギギと音を立てそうな動きで首だけ振り返った

ジッとあたしを見る先輩と視線がぶつかり、慌てて目を逸らす
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