雨恋~雨のちキミ~
「あ…別に、俺はどこでも…」


いつもの先輩スマイルが眩し過ぎて、目が潰れそう


初めて来てもらったのに、いきなり自分の部屋なんて

下心があるみたいやん!


2階へ向いた足を止め、すぐ目の前にあるリビングのドアを開けた

テレビを見ながら寛ぐお兄ちゃんのちょんまげ頭が、ソファの背から覗く


………アカンな


「先輩、やっぱりあたしの部屋で…」


お兄ちゃんに気付かれないよう、静かにドアを閉め2階を指した

少しだけ首を傾げながらも、優しく頷いてくれた先輩に胸がキュウッと締め付けられる


はぁーっ

やっぱり癒されるわー


キラキラした笑顔で皆とじゃれ合い、真剣な表情でコートの中を走り回る先輩が

なぜだか分からないけれど、今目の前に居る


幸せ


自分の部屋の前にやって来て、ふと気になることが…


「先輩!」


「ん?」


「ちょっと待ってて下さい!」


自分が入るだけの隙間を作り、体を部屋の中に滑り込ませた

普段から散らかしてるわけではないけれど、好きな人を部屋の中に招き入れるのに見られて困るものがあったら大変だ

ベッドの上にも、ローテーブルの上にも、勉強机の上にも何もない

ぐるりと部屋の中を見回して


あっ!


壁に掛けてあるコルクボードを、急いでクローゼットの中に押し込んだ
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