雨恋~雨のちキミ~
「あ、ごめん。俺は───」


「知ってます!水月、孝則先輩…ですよね」


一瞬目を見開き、驚いた表情であたしを見る


「まさか、新入生にまで知ってもらえてるとは思わんかった」


少しだけ困った表情で笑う先輩

バスケ部で超有名な先輩のことを知っていたことが、そんなにおかしかっただろうか


「えっ…と………。あの…水月先輩、有名なんで…」


知っていたことを喜ばれると思ったのに

それとは逆の反応をされ、慌てて答えたことを後悔した


ん?

あれ…

ちょっと待って?

先輩、何で『新入生』って…


「何で、あたしのこと…」


慌てて口を押さえる

さっきから、ろくな空気にしていないあたし


これ以上自分から喋るのは止めよ


ギュッと下唇を噛むと


「さっきの………彼氏?」


自分がこぼした疑問とは全然違う言葉が先輩から返ってきた


さっきの………

って、里やん…?


「違います」


「『千賀』って…呼ばれてたやん。だから、仲良いんかと思って」


「………中学が同じなんで」


『千賀』と呼ばれたことには、何て返したらいいのか分からず

ただの幼馴染みだということを強調する


「そっか」


先輩がホッとしたように見えたのは、都合よく解釈し過ぎ?
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