雨恋~雨のちキミ~
「………」


「………」


「………あのさ…」


温くなってしまった紅茶をすすっていると、消えそうな声が聞こえた

つられて顔を上げると、眉を八の字にした先輩があたしを見ている


「何ですか?」


あたしもつられて小声


「今日………保健室で会ったやんか」


「………」


「ホンマに、聞こえてへんかった?」


真剣な眼差しに、肯定することも否定することも出来なかった


「………俺な、渡邊先生と知り合いやねん。…って、知り合いっていうか先生が兄貴の彼女で。もうすぐ結婚するから、義理の姉になるんやけどさ」


答えなかったことを肯定と受け止めたのか

先輩は、自分と先生の関係を話し始める


『そのうち身内になるやん』


渡邊先生の声が頭の中で繰り返された


「結婚式で知り合い紹介するから、彼女作れって言われてて………」


「え───」


好きな人に知り合い紹介されるって、ツライやろうな…


「好きな人が居るからほっといてくれって言ったんやけど、告白したんか可能性はあるんか色々聞かれてさ」


そんなこと言われても、可能性なんか…


「そこで恵ちゃんにお願いがあるんやけど」


一呼吸置くと、先輩も正座して姿勢を正す


「彼氏居らんかったら………俺の彼女に、なってくれへん?」


衝撃的な一言が先輩の口から放たれた
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