雨恋~雨のちキミ~
「へ?」


自分の口から洩れた声は、あまりにも間抜けで


「………こんなこと、いきなり頼まれても迷惑やな…。ごめん」


そう言われて、我に返った


「いっ、いや…そんなこと!先輩モテるのに、本当にあたしでいいんですか?!」


信じられへん


あの高嶺の花の先輩が…

あたしに『彼女になってくれへん?』って


一生分の幸運をここで使ってもえーかも


「あの───」


「ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします」


自分から話を振っておきながら、返事を聞く前に、三つ指ついて深々とお辞儀した


「えっと………恵ちゃん?」


「はい?」


「ありがとう」


頭を上げると、あの時の優しい笑顔がそこにあった


「い、いえ…。こちらこそ………」


何がこちらこそやねん


意味の分からない自分の返答に心の中でツッコミ

1人空回りしているみたいで、愛想笑いにしかならない

それなのに先輩は


「…笑うと可愛いな」


テーブルの上で組んでいた腕を抜き、右手であたしの頬に触れる

予想もしていなかった行動に、心臓がドキンと大きな音を立てた


ん?


『笑うと可愛い』?


「ってことは、普段は可愛くないってことですか?」


喜んだのも束の間

口がへの字に曲がる
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