雨恋~雨のちキミ~
「いやーん、美味しそう」


トレーを持って柚羽を捜していると、彼女がこっちを見て手を挙げてくれたおかげで迷うことなく席に就けた

お弁当に手を付けず待っていてくれた彼女が、キラキラした目で身を乗り出してくる


「何か…予定が変わった」


「何するつもりやったん?」


「サンドイッチ」


「ぶっ、何がどうしてカツカレーに替わるんよ」


だって…

カウンターが近くなる度に、カレーのいい匂いが空っぽの胃を刺激したんやもん


「揚げ物も食べたくなってん」


「えーな。カレーの匂い嗅いだら、食べたくなるわ」


「うん。我慢出来んかった」


「うちもお母さんにカレー作ってもらお」


二段のお弁当箱を広げると、一段目にミートソースのパスタ

二段目には、だし巻き卵やから揚げ、生春巻き…と色とりどりのおかずが入っている


「柚羽のお弁当の方が美味しそう」


「そーか?うちも食堂で食べたいなー」


キャラ弁作りが大好きという柚羽のお母さんは専業主婦

家族で外食もほとんどしないらしく、たまには外で食べたいと柚羽が愚痴をこぼした

中学の頃も購買のパンばかり食べていたあたしとしては、正直柚羽のお母さんみたいに毎日お弁当を作ってくれる方が羨ましい
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