雨恋~雨のちキミ~
「何でいきなり『千賀ちゃん』とか呼んでんの?」


水月先輩を見てみれば、眉間に皺を寄せていて


「何で?いいやん。あ、独占欲?」


ニヤッと笑った鷹野先輩の言葉に『そんなんちゃう』と短く答え


「食べたんやったら教室帰るで」


水月先輩はトレーを持って立ち上がった


「千賀」


頭上から降ってきた先輩の声

突然のことに、状況が呑み込めないまま顔を上げる


「また連絡するから」


いつもの優しい笑顔でそう言い、あたし達の傍から離れていった


「ちょっ…待ってや!」


その後を鷹野先輩も慌てて追いかける


「………嵐が去ったな」


2人を見送ると、柚羽がボソッと呟いた


「何人か、聞かれたんちゃう?」


「え───」


「鷹野先輩、めっちゃ声おっきかったやん。多分、その辺聞こえてるで」


食べ終わったら立ち上がる男子と違い、女子は食べ終わっても座ったまま話に花を咲かせている

人気者の水月先輩

この話が外部に漏れたら、あたしは一体どうなるのだろう


「柚羽………」


「何かあったら、水月先輩に言いや」


「え…、そっち?」


「当たり前やん。彼氏やねんから、何とかしてもらわな。ほら、早よしな昼休み終わるで」


水月先輩目当ての人達に目をつけられないよう心の中で祈りながら

残りのカレーを頬張った
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