雨恋~雨のちキミ~
「1個ずつ食べてみてんけど、ちゃんと分量量って作ったから普通に美味しかったで。恵ちゃんにもおすそ分け」


「これ、先輩の手作り………なんですか?」


あたしの言葉に黙って頷く先輩


「HR終わったら、1階のエントランスで待ってるから。一緒に帰ろ」


エントランスで待ち合わせ…

これって、学園恋愛の王道パターンやん!


肩を並べて歩くあたしと先輩

顔を見合わせ、にこやかに帰宅するあたし達の一場面には

バラの花びらが舞い、キラキラと銀色のグリッターで彩られている


「お返し、期待してるから」


お花畑満開のあたしの頭にポンと手のひらを乗せ、冗談とも本気ともつかない言葉を残し先輩は教室を出ていった


お返し………か

……………ん?

お返しぃ───っ?!


喜んだのも束の間

先輩の言葉を脳内で反芻した途端、体中から血の気が引いていく

グリンと音がしそうな勢いで廊下に頭を向けるも

先輩の姿は、もう既に見えなくなっていた


どっ…

どうしよ………


料理が壊滅的に下手くそだったあたしは、調理実習以外でまともに成功した例(ためし)がない

それもそのはず

家庭科の調理実習は4~5人のグループ制

その中で、あたしは包丁で材料を切ったり、盛り付けしたり、食器を洗ったり…

失敗する可能性がないものばかりを担当していたから
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